こんにちは。
9月になりましたが、相変わらずの猛暑で身体に堪えますね。
夏バテ、熱中症に気を付けて無理なくお過ごしください。
さて、今回のコラムでは認知症の原因となる病気についてお話しします。
1つのコラムにまとめようと思いましたが、かなりの長文になってしまったので分けて書きますね。
認知症の原因とは
前回のコラムでお話しした通り、認知症とは「一度正常に発達した認知機能が低下し、日常生活や社会生活に支障を来した状態」をいいます。
あくまでも状態を指す言葉なので、その原因となる病気は様々です。
教科書には名前のつくものだけでも60種類以上の認知症あるいは認知症様の症状をきたす病気が挙がっています。
中には、腎不全、肝不全、慢性心不全、慢性呼吸不全など脳とは一見関係ないような病気も原因となる場合があります。
これはなぜでしょうか。
認知機能が正常に働くには
ヒトは地球上の生物の中でも最も脳の発達した動物種です。
脳を構成する神経細胞(ニューロン)が電気信号や神経伝達物質を介して情報を伝達し、脳の複雑な情報処理を可能にします。
具体的には神経細胞と神経細胞がシナプスという接続部分を介して繋がって回路を作り、その回路が回ることにより色々な思考や計算、記憶などの複雑な脳の機能をまかなっています。
神経細胞が正常に機能して回路を回すためには、血管の中を流れている血液から酸素やブドウ糖を取り込んでエネルギー源にすることが必要です。
正常に発達した認知機能が上手く働かなくなる状況としては、大きく次の2つの場合があります。
① 神経細胞自体に問題が生じている場合
② エネルギーの供給に問題があって神経細胞が正常に働かなくなっている場合
もちろん②の状況が長く続いている場合は神経細胞自体にも問題が生じてくるので、実際には両方の変化が起こってきます。
神経変性疾患
①による認知症の代表的なものが、アルツハイマー病やレビー小体型認知症などの神経変性疾患です。
神経変性疾患とは脳や脊髄の神経細胞が徐々に減少する病気の総称です。
このグループの病気には他に、以下のものなどがあります。
・前頭側頭型認知症
・パーキンソン病
・進行性核上性麻痺
・大脳皮質基底核変性症
・ハンチントン病
・多系統萎縮症
・嗜銀顆粒性認知症
・神経原線維変化型老年期認知症
聞いたこともないような病気もたくさんあると思いますが、頻度としてはアルツハイマー病やレビー小体型認知症が圧倒的に多いです。
パーキンソン病は神経病理学的にはレビー小体型認知症と同様に脳にレビー小体がたくさん出現して発症する病気ですが、その分布(出現する脳の領域)と程度に違いがあります。
パーキンソン病の場合は手の震えや歩行障害などで発症することが一般的ですが、進行すると認知機能障害を伴ってくる場合もあります。
それぞれの病気に特徴的な症候がありますので、詳細な問診と丁寧な神経学的検査から病気を疑った上で、それを支持する補助的な検査(脳MRIや各種アイソトープ検査など)を行って診断します。
もちろん、この後のコラムで説明するそれ以外に認知症の原因となる他の病気ではないことを確認することが必要です。
神経変性疾患はいずれも徐々に進行する病気で、現時点では根本的な治療がまだ見つかっていませんが、適切に診断して病気に応じた治療をすれば、進行を緩やかにすることや症状の一部を改善させることは可能です。
また病気の進行とともに起こってくる様々な問題についても、当院では経験豊富なスタッフが適切な対応方法をアドバイスするようにしております。
どうぞお気軽にご相談ください。
<参考文献>
日本認知症学会(編) 認知症テキストブック 中外医学社
中島 健二 / 天野直二/ 下濱 俊 / 冨本 秀和 / 三村 將 (編) 認知症ハンドブック 医学書院
北名古屋市 徳重・名古屋芸大駅徒歩3分
内科・脳神経内科・循環器内科・小児科
徳重クリニック
院長 池田知雅
神経内科専門医、認知症学会専門医
頭痛外来、もの忘れ外来