こんにちは。
前回のコラムでは今年度からはじまる高齢者帯状疱疹予防接種に関連して、帯状疱疹という病気と予防接種の必要性についてお話ししました。

今回は高齢者帯状疱疹予防接種に用いる2種類のワクチンの違いについて説明したいと思います。

生ワクチン:乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」®

水痘帯状疱疹ウイルスを弱毒化させて病原性をなくした後、ヒトの細胞で培養増殖させて凍結乾燥したものです。
お子さんの水痘予防接種にも使用されているワクチンですね。
ちなみに「ビケン」とは製造元である阪大微生物病研究会のことで、他にも色々なワクチンを製造しています。

一番の特徴は副反応が少ないこと。
接種部位の発赤や痛み、腫れが多少あるくらいで全身症状はほとんどなく、お子さんでも安全に接種できています。
また補助を受けた場合の自己負担額が2,500円と後述する不活化ワクチンに比べて接種費用を抑えられることもメリットです。

一方で接種後5年経過した時点での発症予防効果は4割程度まで低下しますので、5年後の追加接種をお勧めしています。
また一部のがんやヒト免疫不全ウイルス(HIV)によって免疫機能が低下している方や臓器移植後や自己免疫の病気で免疫抑制剤などの免疫機能を低下させるお薬を内服している方は生ワクチンを接種できません。
今回の定期接種の対象ではないかもしれませんが、妊娠中の方も接種できません。

不活化ワクチン:シングリックス®

帯状疱疹ウイルスの表面に存在する糖タンパク質E(gE)を抗原とした組換えサブユニットワクチンです。
すでに水痘帯状疱疹ウイルスに対する免疫を有する人に対してgE抗原をアジュバント(ワクチンの効果を高める物質)とともに接種すると、gE抗原に特異的なCD4陽性T細胞と抗体が誘導され、帯状疱疹予防効果を発揮します。

一番の特徴は発症予防効果が非常に高いこと。
1年後の発症予防効果は9割以上で、5年後でも約9割、10年後でも約7割とその効果が長く続きます。
さらには帯状疱疹後神経痛の予防効果も高いと報告されており、発症したとしても軽く済むことも期待される効果の一つです。

一方で副反応は生ワクチンと比べて頻度が多く、接種部位の局所反応以外にも倦怠感や筋肉痛、発熱、頭痛など全身症状も報告されています。
ただし、いずれも数日で改善するものがほとんどです。
ワクチンの種類・機序は異なりますが、イメージとしてはmRNAワクチンである新型コロナワクチンで報告された副反応と同じようなものと考えていただいても良いかと思います。

もう一つのネックは接種費用です。
任意接種(全額自己負担)の場合、当院では1回20,000円で2回接種しますので合計40,000円かかってしまいます。
ただし今回接種対象者の方は自治体からの補助を受けて1回6,500円、2回合計13,000円で受けられますので、選択肢に入ってくるのではないでしょうか。

まとめ

2種類のワクチンのポイントについて表にまとめました。
当院では、どちらのワクチンも接種可能です。
それぞれにメリット、デメリットがありますので、悩まれている方は気軽に医師にご相談ください。

<参考文献>
第26回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会 資料
シングリックス添付文書


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内科・脳神経内科・循環器内科・小児科
徳重クリニック
院長 池田知雅
神経内科専門医、認知症学会専門医、頭痛学会
頭痛外来、もの忘れ外来