こんにちは。
新年度になりましたね。
桜も満開で気分も一新、新生活を始められる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
徳重クリニックでは今年度も地域の皆さまが安心して暮らせるよう健康面でサポートさせていただきます。
令和7年度に新たに始まる健康対策
新年度になって始まる新たなこととしては高齢者を対象とした帯状疱疹ワクチンの定期接種があります。
もちろん当院でも実施いたします。
令和7年度の対象者は次のとおりです。
- 65歳になる方
- 70、75、80、85、90、95、100歳になる方
- 101歳以上の方(令和7年度に限り全員が対象)
- 60〜64歳でヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害を有する者として、厚生労働省令で定める方
北名古屋市においては、令和7年度対象者の方に4月末から5月上旬に市から予診票と案内文を郵送されるとのことですので、予診票が届いてから他のワクチン・予防接種と同様に受付窓口もしくはお電話でご予約ください。
北名古屋市からの説明では、今年度接種対象ではない65歳以上の方もこの先5年間で順次対象となり予診票が送付される予定とのことです。
詳細は北名古屋市の高齢者帯状疱疹予防接種案内ページをご参照ください。
帯状疱疹ってどんな病気?
帯状疱疹は、水ぼうそう(水疱瘡、水痘)と同じ水痘帯状疱疹ウイルスで起こる病気です。
痛みを伴う赤い斑点と水ぶくれが多数集まって帯状に生じることが名前の由来です。
今成人の皆さんの多くは小さい頃に水ぼうそうになった経験があると思います。
水ぼうそうは水痘帯状疱疹ウイルスの初感染で発症する病気ですが、水ぼうそうが治った後もごく少量のウイルスが神経(神経節)に潜んでいて、過労やストレスなどで免疫が低下するとウイルスが再び活性化して帯状疱疹を発症します。
一度感染するとウイルスに抵抗できる免疫を獲得しますのでしばらくはウイルスを封じ込めて帯状疱疹は発症しませんが、獲得した免疫は年齢とともに弱くなるため50歳代から発症率が高くなり、80歳までに約3人に1人が発症するといわれています。
また糖尿病やがん、膠原病などの免疫が低下する病気があるとより発症リスクが高くなるという報告があります。
帯状疱疹と神経内科
上で述べたように帯状疱疹は神経節に潜んでいたウイルスが再活性化して神経に沿って広がることで特徴的な症状が出現します。
ウイルスが皮膚に到達して皮疹が出る前に、神経の炎症による体の表面の痛みや違和感、かゆみなどの症状が先行することが多いです。
痛みは「ピリピリする」「ジンジンする」「ズキズキする」といった神経痛の特徴を持っています。
皮疹が出ていれば皮膚科を受診される方も多いと思いますが、皮疹がまだ出ていない場合は神経内科(当院)を受診される方も結構います。
実際、三叉神経痛や肋間神経痛など帯状疱疹が原因ではない場合もありますので、その時点での診断にもとづいてお薬を処方し経過を見ていただいています。
また帯状疱疹のウイルスは神経に炎症を起こして神経障害を来す場合があるので注意が必要です。
顔面神経に沿ってウイルスが広がると顔面神経麻痺を起こして「顔がゆがむ」、「眼が閉じにくい」、「水が口からこぼれる」などの症状が出ることがあります。
麻痺などの神経障害がなくても、一度傷ついた神経が修復するのに時間がかかる場合があり「帯状疱疹後神経痛」として皮疹が治った後もしばらく痛みが続くこともあります。
この場合、抗ウイルス薬でしっかり治療していて皮疹が治っていれば、ウイルスはすでに駆逐できていると考えられますので神経痛のお薬を使って経過を見ていきます。
こうした神経合併症を軽くするためにはなるべく早く抗ウイルス薬の治療を開始することが大事なので、気になる症状があれば受診をしてください。
なぜ今帯状疱疹の予防が必要なのか
実はこの帯状疱疹、近年患者さんが増えています。
日本では2014年から小児に対する水痘ワクチンの定期接種が始まり子どもの水ぼうそうの発症は激減しました。
帯状疱疹については宮崎県で実施された疫学調査の報告ですが、2016年以降20歳未満の帯状疱疹は減った一方で50歳以上の帯状疱疹は年々増えています。
要因の一つとして小児の水痘ワクチン定期接種によって水ぼうそうの子どもが減って、我々が日常的に水痘帯状疱疹ウイルスに接する機会が減った影響が考えられています。
これまでは多くの方が子どもの頃に初めてウイルスに感染し免疫を獲得、親になって子どもが感染した際に再びウイルスに感染することで免疫が強化され、場合によっては祖父母も同様に免疫が強化されることで、言ってみれば自然にワクチンと同じような効果があったと考えられるからです。
さらには核家族化や少子化もウイルスに接する機会が減る方向に働き、一度獲得した免疫は年齢とともに低下するので、高齢化の進む日本において帯状疱疹はますます増加すると予想されています。
帯状疱疹は一度発症すると重症化したり神経合併症を起こしたりする場合もありますので、是非この機会に予防接種を受けていただくことをお勧めします。
定期接種では2種類のワクチンを選んで接種することができます。
次回はその辺りをコラムにしたいと思っています。
※帯状疱疹についてさらに詳しく知りたい方は帯状疱疹.jpもご参照ください。
<参考文献>
第26回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会 資料
Shiraki K, et al. Effect of universal varicella vaccination and behavioral changes against coronavirus disease 2019 pandemic on the incidence of herpes zoster. J Dermatol Sci 2021; 104(3): 185-92.
北名古屋市 徳重・名古屋芸大駅徒歩3分
内科・脳神経内科・循環器内科・小児科
徳重クリニック
院長 池田知雅
神経内科専門医、認知症学会専門医、頭痛学会
頭痛外来、もの忘れ外来