前回のコラムでは片頭痛急性期治療のゴールドスタンダードであるトリプタンについてお話ししました。
このトリプタンについて、個人輸入されて服用されているケースを最近ときどきお聞きしますので、懸念点をお伝えしたいと思います。
ネット上での処方薬の販売
日本ではトリプタンは処方箋が必要な処方薬ですが、個人輸入という形でネット上で販売されているようです。
医薬品の個人輸入でも、原則として地方厚生局に必要書類を提出して認可を受ける必要がありますが、厚生労働省が認めたもので限られた量のものについては特例的に、税関の確認のみで輸入することができるようです。(厚生労働省HP医薬品等の個人輸入について)
つまり、認められた範囲内であれば医薬品の個人輸入自体は違法ではないと言えそうです。
健康被害や偽造医薬品、違法成分のリスクについて
ただし厚生労働省からは、個人輸入や個人輸入代行サービスで購入した医薬品使用による健康被害の事例が多発していると注意喚起がされています。
日本国内で正規に流通している医薬品は、関連する法令に基づいて品質、有効性及び安全性の確認がなされていますが、個人輸入される外国製品にそのような保証はありません。
偽造医薬品を購入してしまうケースや、偽造品でなくても日本の安全基準を満たしていないリスク、最悪の場合は日本では違法な成分が含まれるリスクなどがあります。
また日本と海外では薬の用法用量も異なる場合もありますので、過量内服になってしまうこともあります。
お薬には効果と副作用があり、トリプタンには前回のコラムで述べたような注意点があります。
処方薬は医師や薬剤師の指導・助言に従って服用する範囲内において、重篤な健康被害が生じた場合は「医薬品副作用被害救済制度」の対象となりますが、個人輸入で購入した医薬品では健康被害が生じたとしても公的な救済制度を利用できません。
治療費が高額になったり命の危険を脅かされたとしても自己責任となってしまうのです。
たかが頭痛と思わないで
片頭痛は30代女性の5人に1人と非常に多い病気の一つです。
しかし4割以上の方は病院を受診したことがないというアンケート結果もあります。(頭痛外来について参照)
仕事に子育てなど多忙な日々で受診する時間がなかなか取れないという事情も十分理解できます。
それでも、安易な気持ちで処方箋が必要な薬を個人輸入で購入して服用することは安全面から推奨されません。
金額についても、受診して処方を受けた場合は健康保険の適応となりますので3割の負担で済み、診察費と薬剤費合わせてもネット上の個人輸入の販売価格を上回らないと思います。
何より、医師による丁寧な診察、正しい診断、その上で適切に処方された薬という安心安全はお金では代えられないものです。
加えて、各トリプタンにはそれぞれ特性が少しずつ異なる部分がありますので、そういった点も加味して患者さん一人一人に合うと思われるお薬を提案させていただいております。
お忙しいとは思いますが、土曜や平日夕方も診療しておりますので頭痛でお困りの際はぜひ当院を受診してみてください。
<参考文献>
厚生労働省HP医薬品等を海外から購入しようとされる方へ
北名古屋市 徳重・名古屋芸大駅徒歩3分
内科・脳神経内科・循環器内科・小児科
徳重クリニック
院長 池田知雅
神経内科専門医、認知症学会専門医
頭痛外来、もの忘れ外来
