こんにちは。
梅雨入りしたと思ったら連日の猛暑で皆さま体調崩したりされていませんでしょうか。
熱中症のニュースもありますので、こまめに水分補給して涼しい場所で無理せずに過ごしてくださいね。

さて、今回は前回に引き続き「片頭痛のいろいろ」の後編です。

慢性片頭痛

慢性片頭痛とは「月に15回以上の頻度で3か月を超えて起こり、少なくとも月に8日の頭痛は片頭痛の特徴を持つもの」で、経過により一部の反復性片頭痛から進展するとされています。
簡単に言えば、(普通の)片頭痛が悪化して「月の半分以上頭痛を繰り返している状態」と考えていただいて結構です。

この慢性片頭痛、何が問題かというと日常生活の支障度が大きいことが一番かと思います。
反復性片頭痛でも1回の片頭痛発作が重度であれば仕事を早退しなければならなかったり予定をキャンセルしなければならないこともあるかと思いますが、多くの場合は適切に治療すれば翌日には改善して仕事に復帰できます。
一方で慢性片頭痛の場合は1日乗り越えてもまた翌日も頭痛があったり、月の半分以上で頭痛を繰り返していますので仕事の効率やパフォーマンスが低下したり、場合によっては休職が必要となるケースも出てきます。

治療の点では、頭痛回数が多いため薬物乱用頭痛になりやすく頭痛薬(急性期治療)の効きが悪くなる、また片頭痛予防薬が効きにくいといった特徴が挙げられます。
そのため慢性片頭痛にならないように頭痛回数が増えてきた場合は早めに予防治療を行っていくことが大切です。

薬物乱用頭痛

薬剤の使用過多による頭痛のことを薬物乱用頭痛と言います。
元々、片頭痛もしくは緊張型頭痛などの一次性頭痛の方で、薬の使い過ぎによって新たなタイプの頭痛が出てきたり元の頭痛が悪化して月の半分以上ある状態です。
どれくらいの頻度で使っていると使用過多になるかは薬の種類によって異なりますが、市販薬で多い複合鎮痛薬の場合は「月に10日以上」で、それが3か月を超える場合に薬物乱用と判断されます。

薬物乱用頭痛はいわゆる「肩こり頭痛」とされる緊張型頭痛でも起こりますが、病院を受診される方は片頭痛を基にした薬物乱用頭痛のことが多いです。
また片頭痛と緊張型頭痛両方を併せ持っている方も少なくなく、そのような方も頭痛薬を飲む頻度が増えてしまうため薬物乱用になってしまうことが多いです。

慢性片頭痛、薬物乱用頭痛どっち?

ここまで読んでくださった方にはこんな疑問が生じているかもしれません。
どちらも「片頭痛が悪化して月の半分以上頭痛を繰り返している状態」で頭痛回数が多ければ頭痛薬を飲む回数も多くなってしまうので薬物乱用にもなっている。
そんな方は結構いらっしゃいます。
その場合、慢性片頭痛と薬物乱用頭痛、両方の診断名がつきます。
片頭痛に緊張型頭痛を合併して頭痛薬を飲む回数が増えている場合も慢性片頭痛へ進行するリスクが高いことがわかっています。
どちらが先であっても、いわゆる「負のループ」が出来てしまってさらに片頭痛が悪化してしまう悪循環に陥ってしまいます。

慢性片頭痛と薬物乱用頭痛の治療

薬物乱用頭痛の治療の原則は、「原因薬剤の中止」です。
市販薬が原因の薬物乱用頭痛である場合はそのお薬を使うのをやめていただき、他のタイプの頭痛薬をお出しします。
原因薬剤の中止だけで頭痛が改善する場合は、純粋な薬物乱用頭痛と言えるでしょう。
ただし多くの方はそれだけでは頭痛頻度は改善せず、結局新しいお薬もたくさん飲んで新たな薬物乱用頭痛になってしまいますので、片頭痛の予防薬を使用して頭痛頻度の減少を図っていきます。

慢性片頭痛の治療の中心も片頭痛予防薬です。
緊張型頭痛の合併が疑われる患者さんでは緊張型頭痛に対する予防薬も併用してなるべく頭痛頻度を減らして頭痛薬の内服を減らすことが薬物乱用頭痛にならないために重要です。
上で述べたように反復性片頭痛に比べて慢性片頭痛では予防治療の効果が不十分であることも多いのですが、2021年に発売された新たな片頭痛予防のための注射薬は慢性片頭痛に対しても有効とされています。

大事なのは片頭痛を悪化させないこと

ただし、最も大事なのは慢性片頭痛や薬物乱用頭痛にならないように反復性片頭痛のうちから適切な治療を行ってコントロールすることです。
慢性片頭痛に進行するリスク因子はいくつか報告されていますが、その中でも大きいのは「頭痛頻度の高さ」「頭痛治療が不十分であること」です。
頻度に関しては月5回以上で慢性片頭痛に進行する可能性があり、月10回以上内服していれば薬物乱用頭痛になり得ます。
また1回の頭痛発作をしっかり治療して治めることも大事です。

当院では患者さんの頭痛の状態とご本人の希望に応じて治療を選択する「テーラーメイドの頭痛治療」を行っております。
既に悪化してしまった場合はもちろんのこと、頭痛の回数がそれほど多くなくても将来頭痛を悪化させないためにも早めの受診をお勧めします。

ご予約お待ちしております。(頭痛外来のご案内)

<参考文献>
日本頭痛学会(訳) 国際頭痛分類 第3版
日本頭痛学会(監修) 頭痛の診療ガイドライン2021


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内科・脳神経内科・循環器内科・小児科
徳重クリニック
院長 池田知雅
神経内科専門医、認知症学会専門医、頭痛学会
頭痛外来、もの忘れ外来