こんにちは。
いよいよ東海地方も梅雨入り間近ですね。
春の変わりやすい気候から梅雨時期にかけて悪化する病気の1つに「片頭痛」があります。
一言で片頭痛と言っても痛み方もその程度も十人十色。
ひどいと1日寝込んでしまうこともあれば、毎日のように頭痛を繰り返している方もいらっしゃいます。
今回と次回のコラムでは、このような「片頭痛のいろいろ」についてお話ししたいと思います。

反復性片頭痛

いわゆる「普通の」片頭痛です。
片頭痛発作と言われる特徴的な頭痛を繰り返すのですが、1回の頭痛はほとんどの場合1日以内に治まって、頭痛と頭痛の間(頭痛間欠期)には痛みはなくすっきりとしている状態です。
次回述べる慢性片頭痛も薬物乱用性頭痛も、この「普通の」反復性片頭痛が悪化して生じると考えられています。
頭痛はだんだん強くなってピークを迎えて、吐き気を伴ったり、光や音に敏感になるため薄暗くて静かな場所でじっとしていたいと感じます。
頭痛は寒暖差や気圧の変化で生じやすくなるため「雨の前に決まって頭痛になる」、いわゆる「天気(頭)痛」も片頭痛が原因であることが多いです。
片頭痛には遺伝要因の存在が疑われており、片頭痛の親を持ったお子さんでは早いと小学生から片頭痛が生じることがあります。
20~40歳代の女性で最も多く、その後は加齢とともにその頻度は低下し、程度も軽くなるとされています。

前兆のある片頭痛

反復性片頭痛の中には頭痛発作の直前に「前兆」と呼ばれる特徴的な症状を伴う場合があります。
典型的な前兆に「閃輝暗点」があります。
視野にギザギザした光、光の点や波が現れ、視野の一部が見えにくくなります。
片目ずつで見ても、目を閉じても症状は消えません。
この光や暗点(見えにくい部分)は多くの場合、移動したり拡大/縮小しながら20~30分程度で消失し、続いて頭痛が生じます。
これは片頭痛発作発症のメカニズムの1つとして視覚情報を処理している後頭葉の局所脳血流の変化が生じることと関連していると考えられています。

前兆のある片頭痛の患者さんでも、必ずしも毎回前兆があるとは限りません。
両方の片頭痛を経験する患者さんでは、前兆のある片頭痛の方が痛みの程度が強くなる傾向があり、「普段の(前兆のない)片頭痛では市販薬で効くけど、前兆があるときは効かない」と仰られることも多いです。
トリプタン製剤などの片頭痛治療薬をしっかり使うことがカギになります。

月経関連片頭痛

片頭痛は月経周期との関連も強いとされていて、月経開始前後のみに起こる場合は「月経時片頭痛」、それに加えて他の時期にも頭痛発作を認める場合は「月経関連片頭痛」と言います。
この月経関連片頭痛の方は結構いらっしゃるのですが、生理の度に頭痛が生じるので「頭痛も生理痛の一つ」と思っている方が多いです。
卵胞ホルモン(エストロゲン)の変動によって片頭痛が誘発されるためと考えられています。
月経関連片頭痛の特徴としては「痛みの程度が強い」「1回の持続時間が長い」「連日繰り返す」などがあります。
片頭痛治療薬や予防薬の効き方にも非月経時片頭痛と異なる傾向がありますので、当院ではこのことも意識して治療選択をしております。

低用量ピルと片頭痛の関連

昨今、経口避妊薬としてだけでなく月経困難症や月経前症候群(PMS)の治療として低用量ピル(LEP: low dose estrogen-progestin)を用いられることが一般的になっています。
婦人科で低用量ピルを処方される際に血栓症の合併症リスクについて説明されると思いますが、上で述べた「前兆のある片頭痛」の方ではこの血栓症のリスクがさらに高くなるため「禁忌(使用不可)」です。
ただし「前兆のない片頭痛」だけの方でも、低用量ピル内服によって片頭痛が悪化する場合があります。
その場合は別のタイプの低用量ピルに変更すると改善する場合がありますので処方された婦人科でご相談されると良いです。
お薬によっては低用量ピルを内服することで「月経関連片頭痛」の頻度が減少する場合もあります。

 

今回のコラムでは「反復性片頭痛のいろいろ」をご紹介いたしました。
次回はそれが悪化して「慢性片頭痛」や「薬剤乱用性頭痛」になってしまう場合についてお話ししたいと思います。

<参考文献>
日本頭痛学会(訳) 国際頭痛分類 第3版
日本頭痛学会(監修) 頭痛の診療ガイドライン2021


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内科・脳神経内科・循環器内科・小児科
徳重クリニック
院長 池田知雅
神経内科専門医、認知症学会専門医、頭痛学会
頭痛外来、もの忘れ外来