こんにちは。
木々も紅葉しはじめ、ようやく秋も深まってきましたね。
この時期、昼夜の寒暖差や日ごとの寒暖差も大きくなり、片頭痛を起こしやすくなると言われています。
また移動性高気圧と低気圧が3〜4日程度の周期で交互に通過するため、天気が変わりやすく、気圧の変化で頭痛も増えます。
今回は片頭痛治療でカギになるお薬、片頭痛の特効薬といえるもので、今ある痛みを取り除いてくれる急性期の治療薬の代表「トリプタン」についてお話ししたいと思います。
トリプタンは21世紀の片頭痛治療のゴールドスタンダード
日本で最初に発売されたトリプタン製剤はスマトリプタン注射剤(イミグラン注®)で、2000年のことです。
その翌年には内服薬のスマトリプタン(イミグラン錠®)とゾルミトリプタン(ゾーミッグ錠®)が発売され、現在では内服薬で5種類、点鼻薬と注射剤それぞれ1種類が使えます。
私が医師となったのは2009年なので、その頃にはすでにトリプタンが片頭痛治療のゴールドスタンダードとなっていました。
しかし先輩の医師の話を聞くと、トリプタンが登場するまでは片頭痛と診断しても使える薬が限られていたためあまり有効な治療ができていなかったそうです。
特に病院を受診される患者さんが経験するようなひどい片頭痛発作に対しては、一般的な解熱鎮痛薬(カロナール®など)や非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs:ロキソニン®など)は無効であることも多く、より強い鎮痛薬などを使うこともあったようですが副作用や保険適応外であったりと色々な問題があったそうです。
トリプタンの登場で、このような重度の片頭痛発作に対しても安全で有効な治療ができるようになりました。
いくつかのトリプタンを試していただくことで約9割の片頭痛に対して有効とされています。
最大のコツは内服のタイミング
非常に有効性の高いトリプタンですが、上手くお薬を使っていただくためには内服のタイミングが重要です。
最もトリプタンの効果が高くなる内服のタイミングは、頭痛が始まって1時間以内で、まだ頭痛が軽いうちです。
多くの片頭痛では痛みを感じるようになってから徐々に強くなって、30分から2時間ほどでピークに達するとされています。
ピークに達してからの服用では効果は半減して1回の服用だけでは頭痛が消失しないこともあります。
まだ軽いうちに早めに内服すれば、ピークまでいかずに頭痛が消失することも期待できます。
片頭痛発作の際に吐き気を伴う方は、トリプタンを服用するタイミングで吐き気止めも一緒に服用すると良いでしょう。
吐き気を抑えてくれるだけでなく、痛みを抑えてくれる効果も期待できます。
閃輝暗点などの前兆の症状を伴う方の場合も、一般的には前兆の症状が治まって、痛みを感じるようになってからの服用が推奨されています。
内服するタイミングが早過ぎるとトリプタンの効果のピークが片頭痛発作のピークとずれて効果が減弱する場合があります。
ただし、頭痛発症からピークまでの時間も人それぞれ、薬の効いてくるタイミングも人それぞれですので、ご自身の症状をみて個別にご相談ください。
副作用は一時的だが注意が必要
トリプタンの副作用としては、頻度はそれほど多くありませんが、眠気、倦怠感を感じられる方がいらっしゃいます。
はじめて内服するときは車の運転などしなければならないタイミングは避けていただくことが望ましいです。
また胸・のど・肩の締めつけ感や圧迫感、息苦しさといった不快感を自覚される方もいらっしゃいます。
こちらも一時的な症状で重篤なものではないとされています。
どちらの副作用もトリプタンの種類を変更することで症状が軽くなる場合がありますので、医師にご相談ください。
注意が必要なのは、トリプタンには軽度の血管収縮作用があるため狭心症や脳梗塞などの血管の狭窄を伴う病気を持ってらっしゃる方は使えません。
そのような場合は、次回のコラムでお話しするレイボー®が使えます。
いくつかの薬を併用する場合の注意点
違う種類のトリプタンは最終内服から24時間以内は併用できません。
例えば、スマトリプタンを使ってみたけど効果が不十分で病院を受診、医師に相談してリザトリプタンが処方されたとしましょう。
リザトリプタンはスマトリプタンを最後に服用して24時間以上経ってから服用するようにしてください。
また各トリプタンはそれぞれ効果不十分な場合に同じお薬を追加内服できますが、一定の時間を空ける必要があります。
お薬によって追加内服までの時間や24時間で服用できる錠数の上限が異なりますので、医師や薬剤師にご確認ください。
またお薬によって相互作用といって飲み合わせが悪くなるので一緒に服用できない組み合わせがあります。
初めて受診される方はお薬手帳をご持参いただき、他院の処方薬が変更になった場合も医師にお伝えください。
これからの季節もトリプタンを上手に使って頭痛を乗り越えていきましょう。
<参考文献>
日本頭痛学会(監修) 頭痛の診療ガイドライン2021
北名古屋市 徳重・名古屋芸大駅徒歩3分
内科・脳神経内科・循環器内科・小児科
徳重クリニック
院長 池田知雅
神経内科専門医、認知症学会専門医
頭痛外来、もの忘れ外来
