こんにちは。
だいぶ暖かくなっていよいよ春到来という感じですね。
名古屋でも桜の開花が発表されましたが、この陽気で一気に咲き進みそうですね。
春は出会いと別れの季節でもあります。
歓送迎会などの機会も増えていらっしゃるのではないでしょうか。
そんな季節だからこそ注意していただきたい生活習慣病について、脳神経内科・循環器内科の視点から「なぜ治療が必要なのか」をシリーズで掲載したいと思います。
第一回は脂質異常症です。
脂質異常症とは
2007年のガイドライン改定から脂質異常症の名称が使われるようになってだいぶ経ちますが、一般の方にはまだ馴染みがないかもしれません。
健康診断などで測定される脂質成分の主なものとして、善玉コレステロール=HDLコレステロール、悪玉コレステロール=LDLコレステロール、中性脂肪=トリグリセリドがあります。
2007年以前は「高コレステロール血症」と「高トリグリセリド血症」を併せて「高脂血症」と呼ぶことが一般的でした。
高コレステロール血症とはLDLコレステロールが高いことを指しますが、HDLコレステロールが低い場合も動脈硬化の進行のリスクになることが明らかとなり、「高LDLコレステロール血症」、「低HDLコレステロール血症」、「高トリグリセリド血症」を併せて「脂質異常症」と呼ぶようになっています。
- 高LDLコレステロール血症:LDLコレステロール140mg/dl以上
- 境界域高LDLコレステロール血症:LDLコレステロール120~139mg/dl
- 低HDLコレステロール血症:HDLコレステロール40mg/dl未満
- 高トリグリセリド血症:トリグリセリド150mg/dl以上(空腹時)または175mg/dl以上(随時)
- 高non-HDLコレステロール血症:non-HDLコレステロール170mg/dl以上
- 境界域高non-HDLコレステロール血症:non-HDLコレステロール150~169mg/dl
※Non-HDLコレステロールとは総コレステロールの数値からHDLコレステロールの数値を引いたものです。LDLに加えてレムナントリポ蛋白のコレステロールも含まれます。
そもそも脂質は悪者?
高脂血症の名称が一般的であったことから誤解されている方もいらっしゃるかもしれませんが、脂質は三大栄養素の一つでもあり我々の体に必要な栄養素です。
コレステロールは体を構成する最小単位である細胞の表面を構成する細胞膜や、食べ物の消化吸収に必要な胆汁、体の調子を整えるホルモンのもとになる重要な物質です。
中性脂肪は、余ったエネルギーを貯めておいたり、体温を保つ、内臓を固定するなど、体の中で重要な役割を果たしています。
善玉・悪玉コレステロールの表現も誤解のもとかもしれません。
コレステロールはタンパク質と結合したリポ蛋白の状態で血液中に存在しています。
そのリポ蛋白に低比重リポ蛋白(LDL)と高比重リポ蛋白(HDL)とがあり、それぞれのリポ蛋白に含まれるコレステロールの量を血液検査ではLDLコレステロール、HDLコレステロールとして測定しています。
役割としては、HDLは全身の組織で余ったコレステロールを回収し、LDLはコレステロールを全身に運ぶ働きがあります。
つまりどちらも体に必要なものなのです。
動脈硬化の最大の原因
脂質自体は必要な栄養素ですが、多すぎる(少なすぎる)と問題です。
脂質異常症は生活習慣病の中でも心筋梗塞や脳梗塞などの原因となる動脈硬化を進行させる危険因子として特に重要とされています。

上の図は動脈硬化の進行を表したイメージですが、コレステロールの運搬を担うLDLが血液中に多い状態では血管の壁にコレステロールが蓄積しプラークができやすくなります。
血液中に中性脂肪が多い状態ではLDLがより小型・高密度化し(small dense LDLといいます)、血管壁に侵入・沈着しやすくなります。
HDLはその血管内にたまったコレステロールを肝臓へ戻すように働きますが、HDLが少ない状態では回収が悪くなりコレステロールが血管壁に蓄積しやすくなります。
コレステロールが豊富なプラークは不安定で傷つきやすく、傷が出来ると破れた部分を修復するため、血液の成分の一つである血小板が集まり血栓ができます。
この血栓が大きくなって血管を塞いでしまうと、その先の組織に酸素や栄養が届かなくなり、組織の細胞が死んでしまう「梗塞」という状態になります。
脳の血管で起きれば脳梗塞、心臓の血管なら心筋梗塞となり、命に関わったり重篤な後遺症を残したりします。
致命的な病気を引き起こすサイレントキラー
脂質異常症はそれ自体で症状を起こすことはないためサイレントキラーとも言われます。
なぜなら、こうした脳梗塞、心筋梗塞のリスクが高くなることが数多くの研究で明らかになっているからです。
代表的なものとして日本人を対象とした吹田研究で、45歳の男性の場合、その後の人生で心筋梗塞などの冠動脈疾患を発症するリスクは、LDLコレステロール160mg/dL未満の13.7%に対し、160mg/dL以上では47.2%と3倍以上です。
3倍の数字もさることながら、半分弱で発症するという点もかなりインパクトのある数字ではないでしょうか。
また別の研究では、LDLコレステロールが30mg/dl上昇するごとに冠動脈疾患発症や死亡のリスクは男性で1.3倍、女性で1.25倍ずつ指数関数的に増加することが示されています。
高ければ高いほどリスクが高いことは言うまでもありません。
脂質異常症の治療
脂質異常症は、生まれつきの遺伝的な背景でなっているものと、甲状腺機能低下症などの基礎疾患や薬剤の使用、不摂生な生活などによって発症するものがあります。
後者の場合は、原因となっている病気を治療したり、生活習慣を見直したりすることで予防・改善することが可能です。
生活習慣の改善としては以下のものが推奨されています。
- 禁煙し、受動喫煙を回避する
- 過食を抑え、標準体重を維持する
- 肉の脂身、乳製品、卵黄の摂取を抑え、魚類、大豆製品の摂取を増やす
- 野菜、果物、食物繊維、海藻の摂取を増やす
- 食塩を多く含む食品の摂取を控える(6g/日未満)
- アルコールの過剰摂取を控える(25g/日以下)
- 有酸素運動を毎日30分以上行う
生活習慣の改善で脂質管理が不十分な場合には、薬物治療を考慮します。
個々の患者さんの背景によって、動脈硬化のリスクを評価し、リスクの高い方はより高い治療目標を目指して生活習慣の改善や薬物治療を行っています。
脂質異常症の治療薬でも近年いくつか新しく使えるようになった薬がありますので、患者さんの背景と治療目標の数値を見ながら最適な選択肢をご提示するようにしています。
まずは健康診断の結果を見てみましょう
脂質異常症はサイレントキラー。それ自体では症状は出ません。
まずは健康診断の結果を見ていただき、要精査や要受診になっている方は早めに受診していただくことをお勧めします。
<参考文献>
日本動脈硬化学会 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版
Sugiyama D, et al. J Atheroscler Thromb 2020; 27(1): 60-70.
Imano H, et al. Prev Med 2011; 52: 381-386.
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徳重クリニック
院長 池田知雅
神経内科専門医、認知症学会専門医、頭痛学会
頭痛外来、もの忘れ外来
